この記事は「特定技能制度とは何?」という疑問をもつ方に向けて、質問の多い内容を取り上げた記事内容になっています。
ネットやSNSなどで「特定技能」という言葉を見たけど意味は全くわからない!内容をしりたい!という方にぜひ読んで貰いたい記事です。
具体的には、次の内容を網羅しています。
- 特定技能制度の目的とは
- 国籍別の特定技能外国人数
- 特定技能1号と2号の違いとは
- 技能実習制度との違い
- 特定技能制度を使える外国人の要件
- 特定技能制度の登録支援機関とは
- 特定技能制度で外国人を受入れできる業種
- 特定技能制度で安い労働力を受入れできるか
- 特定技能制度は移民政策なのか
それでは、特定技能制度について見ていきましょう。
特定技能制度の目的とは
特定技能制度は、2019年に開始された「外国人労働者」を受入れするための制度です。
特定技能1号と2号があり、日本の人手不足が深刻な12業種に該当する企業または個人事業主に、外国人労働者の受け入れを認めた制度となっています。
制度の目的は、外国人のマンパワーを借りての日本の人手不足解消です。
国籍別の特定技能外国人数
特定技能制度を使って、日本で就労している外国人はどんな国籍が多いのでしょうか?
2022年3月末時点での上位5ヶ国の統計データを次の表にまとめました。
国籍 | 人数 | 割合 |
ベトナム | 40,696 | 63% |
フィリピン | 6,251 | 10% |
インドネシア | 5,855 | 9% |
中国 | 4,546 | 7% |
ミャンマー | 2,944 | 5% |
ベトナム人が圧倒的に多く、その他の国籍の外国人は大差ない割合で在留しいることがわかります。
特定技能1号と2号の違いとは
特定技能制度には、特定技能1号と2号があります。
主な違いを次の表にまとめました。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
在留期間 | 最大5年 | 無期限 |
就労可能な業種 | 12業種 | 2業種 |
家族呼び寄せ | 不可 | 可能 |
支援の要否 | 必要 | 不要 |
特定技能2号の方が、多くのメリットを享受できることがわかると思います。
ただし、2022年3月末時点で、特定技能1号の資格を取得して在留している外国人の数は約65000人いますが、特定技能2号の資格を取得しているのはわずか1名です。
また、技能検定1級や同等レベルの試験への合格に加えて、一定以上の実務経験が問われるなど、高いハードルが設定されており、相当優秀な外国人でなければ特定技能2号の資格を取得することができません。
技能実習制度との違い
「特定技能制度」と「技能実習制度」の主な違いは次のとおりです。
制度の目的
特定技能制度 | 技能実習制度 |
日本の人手不足を外国人の労働力で充足すること | 技術移転を通しての発展途上国への国際協力 |
転職可否
特定技能制度 | 技能実習制度 |
転職可 | 転職不可 |
在留期間
特定技能制度 | 技能実習制度 |
特定技能1号(最大5年)、特定技能2号 (無期限) | 技能実習1号(1年)、技能実習2号(2年)、 技能実習3号(2年) |
資格許可時の日本語レベル
特定技能制度 | 技能実習制度 |
日本で技能実習を3年間以上終えた外国人 または日本語能力検定N4以上 | 日本語の基準なし |
※上記は、特定技能1号の資格を取得する場合の日本語レベルです。
特定技能制度を使える外国人の要件
外国人が「特定技能制度」を使って日本で就労するためには、次の2つのうちの何れかの要件を満たす必要があります。
➀特定技能制度を使って就労を希望する業種にて「技能実習2号」を修了する
特定技能制度を使うことが認められている人手不足が深刻な12業種にて、「技能実習2号を修了した外国人」は、無条件で、特定技能制度を使っての就労継続が許可されます。
ただし、就労できる業種は、技能実習をしていた業種に限られます。
②特定技能制度を使って就労を希望する業種の「技能試験合格」と全業種共通の「日本語基準」を満たす
特定技能の12業種それぞれで、特定技能の技能試験が設けられており、就労を希望する業種の試験に合格することで「技能要件」を満たすことができます。
加えて、「日本語能力試験N4以上」または「JFT-BasicA2レベル」の試験に合格することで「日本語要件」を満たすことができます。
技能要件と日本語要件を満たすことで、特定技能制度での就労が認められます。
なお、紹介した2つの要件は、特定技能1号の資格を取得するための要件です。
「特定技能2号」の要件では、就労を希望する業種の技能検定1級合格や同程度の試験合格、一定の実務経験などが要求されます。

特定技能制度の登録支援機関とは
特定技能制度とセットで登場する言葉に「登録支援機関」があります。
登録支援機関とは、特定技能制度を使って外国人を受入れする企業に対して、実施義務が課されている「支援業務」を代行してくれる業者です。
現在では、特定技能制度を使う企業の大半が登録支援機関とも契約をしています。
登録支援機関の業務などについて、詳しく知りたい方は次の記事も確認してみて下さい。

特定技能制度で外国人を受入れできる業種
特定技能制度では、次の表のとおり12業種での外国人労働者受入れが認められています。
介護 | ビルクリーニング | 建設 | 造船 |
自動車整備 | 航空 | 宿泊 | 農業 |
漁業 | 飲食料品製造業 | 外食業 | 製造業 |
なお、「特定技能2号」では、建設と造船のみでの受入れが可能です。
特定技能制度で安い労働力を受入れできるか
結論、特定技能制度では安い外国人労働力を確保することは不可能です。
特定技能制度で受入れする外国人には、日本人従業員と同じ基準で算出された給与を支払う必要があります。
加えて、特定技能制度運の運用や、在留カードの更新などの費用や手間を考慮すると、日本人従業員を雇用するより、多くの費用がかかることは確実です。
そのため、特定技能制度で外国人を受入れするのは、日本人ではどうしても人材が集まらない企業であり、安い労働力確保のために外国人を受入れしたいという企業には特定技能制度は向いていません。

特定技能制度は移民政策なのか
特定技能制度は、メディアなどで「移民政策」と揶揄されることがありまが、本当に移民政策と言えるのでしょうか。
そこで、移民政策かどうかを検証するためにまずは「移民」の定義を見てみましょう。
コトバンクによると移民とは、「個人あるいは集団が職を求めるなどのさまざまな動機、原因によって、恒久的に、あるいは相当長期間にわたって、1つの国から他の国に移り住むこと」とされています。
そのため、移民と呼ばれるためには「日本で永住権を取得できるかどうか」が判断基準になると考えられます。
実際に、特定技能制度では外国人が永住権を獲得することは可能です。
しかし、相当高いハードルが設けられていることは知っておかなければなりません。
特定技能制度では、特定技能1号と2号がありますが、大多数が取得している特定技能1号で就労をしても永住権を取得することは不可能です。
理由は、永住権の申請要件のひとつである「日本に10年以上在留して且つ、内5年間は就労資格または居住資格での在留期間が必要」というルールを満たせないためです。
特定技能1号で就労する期間は、「就労資格または居住資格」に該当しません。
一方で、特定技能2号は「就労資格または居住資格」として扱われますが、特定技能2号の資格を取得する要件はかなり厳しく、現状では2022年4月に日本で初めて特定技能2号の資格を取得した外国人が発表されただけで、特定技能2号の資格の運用はほとんど進んでいないのが実情です。
かなり優秀な外国人しか特定技能2号を取得できないため、今後も人数が急増するようなことはないでしょう。
これらの情報を整理すると、特定技能1号では永住権を取得することはできず、特定技能2号の資格を取得するのもかなりハードルが高い上に、現状では特定技能の2業種(建設と造船)のみで特定技能2号が認められているだけのため、かなりの狭き門です。
また、たとえ特定技能2号の資格を取得できたとしても、そこから永住権を取得するまでに最低でも5年かかります。
これらのハードルを考慮すると、特定技能制度を移民政策と呼ぶのは現状では適切ではないと言えるでしょう。
まとめ
この記事では、「特定技能制度」について、多くの方が知りたいと思う事項をピックアップして紹介しました。
記事を読んで特定技能制度の内容を少しでも知って頂くことができたら幸いです。